加茂物狂

宝生流、金剛流、喜多流でのみ舞われるちょっと珍しい演目です。

都の男が東国に行っている間に行っている間に妻(通婚の設定と思われる)を置いてきたら物狂になっていたと・・・。

物狂いというのは諸説ありますが、本当におかしくなっているのではなくて、経済的事情や通行の自由のために渡り巫女に近い形で各地の神社仏閣で舞を奉納して歩いている状態です。今でいえば、別れた彼女がユーチューバーになっていたくらいの話です。

シテの謡本ではふと思い立って東国見物に3年ほど出かけていて、都が恋しくなって戻ってきたら加茂の祭礼だったというところから話が始まるので、なんだかよくわからないお話なのですが・・・

今回のワキは 我、さる仔細ありて東に下りはや十か年に及びて候と謡っていました。この時のワキの衣装は直垂に長袴を着けて従者としてツレを従えています。国司とかそんな感じで赴任した下級貴族でしょうか。

国司は大変お金儲けになるお仕事ですが、時代によっては東国で頻繁に武士の反乱がおきています。

謡の中に”これこそさしも実方の、宮居給ひし装いの”とあります。この藤原実方というのは清少納言と付き合いがあり、その後、藤原行成との三角関係で問題を起こして陸奥の国に左遷される形で赴任させられた人です。この謡曲では左遷で東国の田舎に左遷されて戻ってきたという裏設定が想起させられます。

都に戻ってきた男はシテの謡本ではいきなり加茂の祭礼に出かけるという雑な男なのですが・・・。この日のワキは、女と暮らしていた五条の家に向かいます。そこで妻が神社に詣でると言い残して戻っていないことを知ります。

You may also like

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です