茶書を読む 山上宗二記 2

御身は東山に御隠遁ありて 四季共に 昼夜の御遊興は甚だ斜めならず
頃は秋の末月、いまだ遅宵の空、誠に虫の音さえ無くますます物哀れなる折節
能阿弥を召して、源氏物語、ことには雨夜の品定、歌、連歌、月見、花見、毬、小弓
扇合せ、絵合せ、草尽し、虫尽し、様々興ぜしこし方も事ども御物語なさるるの刻
昔よりありきたる遊びは早や事も尽きぬ
ようやく冬近し 雪の山を分けて鷹狩りも御年行に随いて御退屈なり
何か珍しき御遊びあるべきか など御諚の節
能阿弥謹んで得心いたし 首を垂れる
やや暫くありて その憚りを顧みず申し上げ候
されば楽道の上は御茶の湯と申す事御座候

義政様は東山に御隠居なされて、四季問わずまた、昼夜となく盛んに遊興をなされていました
秋の末の頃、日が暮れていくらか時間の経った頃であろうか虫の鳴く声も聞こえず、なんともしみじみとした夜に
能阿弥を召し出して源氏物語、雨の夜の風情、和歌、連歌、月見、花見、蹴鞠、小弓を使った遊び
扇や絵の風流を競う遊び、草花や虫の名前や歌などを挙げ連ねる遊びなどなど様々な遊びについてお話なさって居られたとき
昔からあり、たびたび親しんできた遊びは早々に話も尽きてしまいました
冬も徐々に近づいてきて居る、雪山を駆けての鷹狩りも年齢とともに面白いとも思わなくなって来た
何か珍しい遊びはあるか などとご下問なされた折
能阿弥は謹んで承り、少し考える様子であった
暫くあって、畏れ多いことではあったが申し上げなされた
それで御座いましたら、風雅を楽しむ物として茶の湯と言うものがございます

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